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女工哀史3―哀歌(エレジー)

「女工哀史3―哀歌(エレジー)」  文学のにほひ
女工哀史・・・。それは世にも残酷な物語。

以下は女工の小唄ですが、この小唄をかいつまんで抜粋しませう。

籠の鳥より監獄よりも、寄宿住まいはなお辛い

工場は地獄よ 主任が鬼で、廻る運転火の車

糸は切れ役わしゃつなぎ役、そばの部長さんにらみ役

偉そうにするな お前もわしも、同じ会社の金もらう

偉そうにする主任じゃとても、もとは桝目のくそ男工

会社勤めは監獄勤め、金の鎖がないばかり

男工何する 機械の蔭で、破れたシャツの虱(しらみ)取る

うれし涙を茶碗に受けて、親に酒だと飲ませたい

いつも工場長の話を聴けば、貯金貯金と時計のようだ

うちが貧乏で十二の時に、売られてきましたこの会社



「生きる屍(しかばね)の譜(ふ)」

桜散りても来年の、四月来たならまたも咲く、悲しい私はいつ咲くの、心に花咲く暇もない

「数え歌」

一つとせ、人も知ったる山の中、来てみりゃ駿河の富士紡績、音に聞こえる滝の音

八つとせ、やめて帰ろと思えども、汽車賃無しでは帰られぬ、汽車道眺めて目に涙


「哀歌」

ほんに憂き世じゃ機屋の女子(おなご)、機屋女子に誰がした・・・

「小唄」

丹後但馬(但馬)は女子の夜這い(おなごのよばい)、男極楽寝てござる

加悦(かや)の谷とは誰が言(ゆ)たよ言(ゆ)た、地獄谷かや日も射さぬ


  *

さて、女工たちの弱点と病気と死についてちょっと語ります。

大部分の女工たちには哀しいかな学がないので、ろくに字も書けないのがほとんど。従って、仮に、
「思いを打ち明けて、紙に書いてみよ」
と言われたところでほとんど白紙だという。・・・ムゴイよね~。
それで先の小唄が出来たのね~。x±x
また、ストライキをしても、伝える言葉や術(すべ)が見つからないのでこれも雇い主側の思う壺。

女工はいつも工場にいるので、外界には疎いんですよね~。
又連れて来られたのが少女の頃なんで、ほとんど世間知らず。
かといって、すれてないのかというとそうでもなく、工場の隠微で歪んだ世界にどかっと腰を下すとどうしても言葉遣いも乱暴になる。男工を蔑(さげす)む傾向もある。
ついでに、彼女らは乗り物酔い、雑踏酔いもしやすいようで、汽車で遠足に行きたがらない人も多かったよう。

女工は嫉妬心、猜疑心(さいぎしん)も強くなる。こんな所に缶詰にされたら心も狭くなるのも至極当然だが・・・。x±x
夫婦間においてはもちろん、特に工場内で誰かがいい仕事をするとそれだけで妬(ねた)み嫉(そね)むのだ。工場側でそれが公平な扱いだとしても、本人たちはちっとも公平と思ってはいない。

それから、どうしても精神病が多い。こんな粗悪な工場にいるんだから、気が狂うのも当然。×±×

さらに気の毒なのは、女工が亡くなった後。
工場の隅にある「死体室」は譬えて言うなら便所と一緒で、作者も地獄を見たようだと言っている。
末期の水も飲ませてもらえずに恨みだけ呑んで死んでいく。
仏を棺桶に入れたまま棺巻一つせず、これを車に乗せ、むき出しのまま人夫に担がせて砂村の焼き場へ棄てに行く東京の工場があるという。

  *

次に、女工が被(こうむ)った事件ですが、警察側も工場経営者側と口裏を合わせたように女工に厳しい・・・。こんな例がありました。

時は今年六月である。ある工場の寄宿舎部屋長の現金六十円あまりを何者かによって窃取(せっしゅ)された。そこへ早速刑事が現れて、平野タケ子という女工を捕らえて散々打擲(ちょうちゃく=ぶち殴ること)しながら言うのであった。
「おい! お前この着物をどこから盗んで来た?」
「いいえ、盗んでなど来やしません。働いて拵(こしら)えたのです」
「生意気なことを言うな。女工がこんな絹の着物など入るものか、確かに盗んだに相違なかろう? どこで取ったか白状しろ」
こう言ってはしたたか打つ。
「お前、この時計をどこでかっぱらった?」
「いいえ、あたしが買ったのです」
「女工に時計や指輪が入るものか。お前、このオペラバッグはどこで万引きして来た?」
「あたしの金で浅草へ行って買ったのです」
「強情はるとためにならんぞ! 人間はこんなものを持つようになってはおしまいだ。これは令嬢か淫売婦の持つものじゃないか?、お前らの持つものじゃない。さあ早く皆を言ってしまえ!」
彼女はあまりの悔しさに泣いた。
「こら! しらばっくれてどうあっても白状しないな。よっし! そんなら仕方がないから連れて行ってやる」
刑事はこう言って引きずるように拘(こう)引し、ついにタケ子を一昼夜の拘留に処した。
一方その部屋のうちタケ子の友達は皆な彼女が品物を買った店も知っていれば、時計や指環も現に保証書までついているのを知っているゆえ、団結して工場長に彼女の赦放(しゃほう)を迫ったのである。
ところが一方ふとした証拠から真犯人は上がったのであった。それは驚くべし、女工の監督の任にあたる「世話係」の一人であった。しかも彼女は寄宿舎主任の妾という話だ。
警察では翌日タケ子を放還するとき、
「こんな間違いのあったことや、そのほか警察のことを喋ったら承知しないぞ。万一お前が人に話したら再び、今度は本当の監獄へ入れてやるからそう思え」
と言って威嚇したのであった。そしてその真犯人の世話係は何の事もない。こんなにして前記タケ子が嫌疑をかけられた原因は、多くの衣装や装身具を所持していたからであったのだと。
女工がオペラバッグを持って耳隠しに結っちゃ悪いと、いつの昔に誰が決めたか。・・・


まあ、現在では概ね善良な警官が多い中、こんな強者の味方「おいこら警官」も未だにいるようですが、それにしてもひどい話ですな。女工ばかりが損をしてます。真犯人は経営者側の「世話係」、なのに殴られた挙句、警官にまで脅されて・・・。
とんだとばっちりですな。x±x

 *

最後の最後に、女工の怨恨による僅かなる反撃と哀しい結末の例で〆(しめ)ましょう。
こんな事件がありますた。

「妾、今日とても起きられませんのです。済みませんが休ませてください」
お芳は昨夜から熱も高いし、咳も激しく出るので、布団の中から拝むように頼んだ。起こしに来た部屋係は、もう四十に近いと思われるが、赤っ毛を大きな束髪に結って、白粉(おしろい)を濃く塗った若作りの大年増(おおどしま)である。口聞くたびに、ずらりと入れた金歯が毒々しく光る。
「また休むの・・・本当に怠け者だね、なんだいそればかりの咳にさ・・・」
と噛み付くように言いながら、世話係の婦人は矢庭(やにわ)にお芳を引っぱたいた。
「アッ」
お芳はあわてて寝巻きの前を掻き合わせながら、起き上がろうとしたが、力なく突っ伏してしまった。
「おやお前さん、起きないんだね」
「・・・・・・」
お芳は答えなかった。
「ヲイ!」
すると世話係は頭に差していた鉛筆を取って、お芳の肩のあたりをちょいと突いた。
「でも今日は大変苦しいのですもの」
上げた顔は見る形もなくやつれて落ち込んだ両の目は、怨恨(えんこん)に燃えてはいるが、涙はとめどなく頬へ伝わって来る。
「どうぞ休ませてください」
と、お芳はやっと言い切ると、再び布団の上へペタペタと崩れるように倒れてしまった。白い首筋には、暫らく櫛を入れない髪の毛が、ほつれかかっている。世話係が、
「どうしても起きられないのかね、ほんとに強情な人だね・・・」
と言ったかと思うと、お芳は飛び上がった。そして彼女は部屋係の腕にすがりついた。それでなくても寒さに冷え切っているお芳の襟首には、無惨にも冷水が流れている。いつの間にか世話婦の手には、非常用の赤バケツが持たれていた。そして、
「ソラ水をかけると起きられるじゃないか。全くウソツキだネ」
と罵った。
お芳はもう黙って何も言わなかった。そしてただ心の中で、
「どうせ病で死んでいく身体だ。この恨みは晴らしてみせる」
と覚悟を定めたのであった。
それから約一週間ばかり呼び起こされなくとも一人で工場へ行って働いた。お芳はその間に工場で使う鋭利な刃物を持ち出した。
その日は北風が吹いて、明け方から降り出した雪は翌朝も晴れないで工場の屋根も寄宿舎の庭も一面に真っ白くなった。どこからともなく寒い風が雪を運び込んで来る。床の中で眠りもやらず、お芳は来し方を考え、思わずすすり泣きした。
彼女は十二の年に女親に死に別れ慈愛の父親の手一つで十八の五月まではぐくまれたが、父親が世間の好景気熱に浮かされて相場に手を出したが、思うように行かず、一文無しのわびしい生活をするようになったのを見るに見かね僅かな金を借りて会社に雇われ、一年半も働いていたのであったが、元来壮健でない体は栄養不良と過労のためにとうとう病に罹(かか)ったのである―と考えていると。
「おいまた偽病気だね」
と障子の外で世話係の声がした。けれどもお芳は黙って布団をかぶっていた。
「起きないの・・・なんという怠け者だろうネ」
と言いながら、世話係は布団を取ってお芳の顔を覗き込むと同時に、
「きゃっ」
と叫び声を上げた。
世話係の左の眼からは鮮血がほとばしっていた。と、同時にお芳は心臓麻痺で息絶えた・・・。


・・・世話係、やな奴ですね~。`±´
世にも哀れで可哀想な話ですね。x±x

  *

・・・寄宿流れて工場が焼けて、門番コレラで死ねばよい・・・

なんて哀しい唄でしょう・・・。

いかがでしたか?

「女工」たちの痛ましい世界を少しでもお伝えできましたでしょうか。
そんなわけで、もっともっと語りたい所はたくさんありますが、あまり書いてても気が滅入るだけ。x±x

長い間「女工哀史」にお付き合い頂き、ありがとうございました。
m u±u m

オシャマイ。^±^
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テーマ : 読書記録
ジャンル : 小説・文学

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