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かさぶた4

――大して美味い(うまい)ものではない!
それはやけにぱさぱさして、それでいて歯にくっ付き易く食べ難いものだった。
然し、僕にとって、この行為もまた恍惚(エクスタシー)の一つに同化てしまった。この行為は母を非常に吃驚(びっくり)させ、落胆させ、憤怒(ふんぬ)させたが、それでも止められなかった。
至極当然、この恍惚(エクスタシー)を味わう度に、僕は母に怒られた。それ故に、何時しか僕はこそこそと人目を偲んで愉しむようになっていった。
この「かさぶたを毟って口にする」という倒錯した欲望は、一ケ月程経つと、最早「病的」となってしまった。かさぶたを毟るのが日課の一つとなってしまって居たのである。「病み付き」を越えて、既に二進も三進も(にっちもさっちも)行かなくなっていた。
具体的に言えば、毟らずには居られない――毎日、否、日常が同じ衝動にかられ、事ある毎に、左の二の腕が気になってしまう。然も、この頃になると、初めて口に含んだ時と違い、微か(かすか)に味がするのを悟っていた。面白いことに、その日の気分によって味が僅少(きんしょう)ながら違うのである。胡桃(くるみ)の味がしたり、ピーナッツ、栗のような味がしたりと。狂気の沙汰と言うべきか、味がわかると、かさぶたも満更(まんざら)不味い(まずい)ものではないと思ったりもした。
ところで、飽くまでも推測だが、母親は僕が隠れて恍惚(エクスタシー)を愉しんでいたのを知っていたのではないか、と思う。何故ならば、下着の左袖が血で沁(しみ)になった事もあった筈だから。それを注意しなかったのだから、最終的に、余程呆れられたのだろう。
小説1-2(かさぶた)

  *  

何も無いままに月日が経つと思っていたのに、とうとう大事件が起きてしまった。
体育の授業が終り、皆が教室に帰る途中の出来事だった。
この頃になると、已に(すでに)僕のかさぶたも余程大きくなり、僕もそれが出来る度に、詰り一日に何度も毟り続け、然も腕に血が滲まないと気が済まない位エスカレートしてしまっていた。僕は豆粒程にまで成長したそれを毟りながら、一人で歩いていた。
その時、クラスメイトのH君が僕のこの異常な行動に気付いて、奔り寄り、もの珍しそうに覗き込んだ。
僕は慌てて二の腕を手で押さえ隠した。
「何やってるんだよ」
H君は怪訝(けげん)な顔つきで僕に言った。
「い…いや、何でもないよ…」
僕は恥ずかしさでいっぱいになり、小声で口籠った。が、気まずくなるのも嫌だったので。無理矢理作り笑いを浮かべ、H君に言った。
「何でもない、何でもない」
然し、隠せば隠す程、見たくなるのがこの世の常であった。結果、僕のこの逃げ口上が反って彼の好奇心を煽り立ててしまっていたのだ。
――それならば、とH君は僕の腋の下を擽り(くすぐり)出した。
「よせよォ!」
僕は半分怒りながら言ったが、彼の擽りはなおも揺ぎ無い。と、そこで僕は礫(こいし)に躓き(つまづき)、その拍子に薔薇(ばら)の茂みに左半身が嵌って(はまって)しまった。慌てて両手で自身を庇った(かばった)。
「痛えっ…」

僕の左腕を見て、H君は大変に吃驚(びっくり)した。
「どうしたんだよ! 君のその腕!」
皆に聞こえるほど大きな声で、H君は言った。
「…な、何でもないよ…」
僕ははっとして、慌てて二の腕を隠し直した。時既に遅しだった。
自分の悦楽でかさぶたを毟り続けたらこうなったと、正直に言えなかった。仮令(たとえ)正直に言ったところで僕の行為に対して誰一人として同情する者は居ないだろう。寧ろ変人扱いされるのがおちである。
「なんでもない筈がないじゃないか! 君の腕、血だらけじゃないか!」
それでも僕は貝の様に口を閉ざさざるを得なかった。
然し、H君の大きな声は僕に不運を齎した(もたらした)。
「どうした!どうした!」
いち早くS君が心配してやって来て、この異常に気付いたクラスの生徒達が次々と、芋蔓式(いもづるしき)にS君を追いかけ、忽ち小さな人垣が出来てしまった。
僕は腕を隠し続けながらも、
「な、何でもないってばァ」
と、再び笑顔を繕い(つくろい)、言った。だが、
「何でもない訳ないだろう? 君の腕は血だらけなんだから」
H君は皆に吹聴(ふいちょう)してしまった。
「ほら、その腕、どけてみろよ!」
「嫌だよ。大丈夫だよ」
「どけろって!」
騒いでいるうちに最悪の事態が訪れた。
とうとうこの騒ぎに体育の先生までが駆けつけて来てしまったのだ。

(つづく)
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テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学

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