昔は鰯が安い魚の代名詞、鯛が高い魚の代名詞だったんですが、最近では様子が変わってきましたよね。
落語でも長屋の人々が七輪で焼いてる様相のネタがありましたが、大概、鰯(いわし)や秋刀魚(さんま)だったのです。
たとえば、「青菜」では、おかみさんが、
「このどんつく。いわしがさめちゃうよ!」
なんてせりふがあります。
逆に、これが鯛(たい)ですと、お殿様に献上する魚の代名詞のはずだったんですが。
落語、「
桜鯛(さくらだい)」などは、その代表的作品ですね。^±^ノ
殿様がひと箸つけて、
「これ、鯛の代わりを持てい」
と言って、鯛の表を一口だけ食べて、お代わりを持ってこさせようとするのですが、なにしろ高価なものなので家来が一工夫。
「殿様、外の桜がきれいですね」
と言って、殿様が外の桜を見る隙にさっと鯛を裏返します。
で、
「代わりをお持ちしました」
ととぼけるわけ。これならば表の殿様が鯛を食べた跡はわからず、お代わりを差し出されたのかなと思うでしょうから。
ところがお殿様一枚も二枚も上手。家来の細工なぞ何のその。また一口を食べ、
「代わりを持てい」
で、家来がほとほと困ってまごまごしていると、
「どうじゃ? また庭の桜を見ようか?」
殿様もこの程度の細工はものともしない、とうに知ってたぞ、というオチです。
・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・
また、「
目黒のさんま」というのもあります。^±^ノ
殿様が目黒の原で、家来と馬の駆け比べをしてお腹をすかせるところになにやらいいにおいが。
「オイ家来。この異なにおいはなんじゃ?」
それは至極ごもっともで、そのにおいの正体はさんまで、庶民の食べ物。安すぎて、到底殿様の口には入らないものです。
ところがお腹がすいた殿様は、何でもいいから食べたいとわがままを言い出す始末。
で、家来がその家を訪ね、さんまを分けてもらい、殿様はたらふく食べたのですが、その味が忘れられない・・・。これが七輪で焼いて炭がついたのを醤油でじゅっとかけただけの物なんですが、殿様にとっては今までに食べたことのない「初物」で、ただでさえ駆け比べでお腹がすいたうえ、殿様にとってよほどの「珍味」だったのでしょう。
「ああ、さんまが食べたい」と思い焦がれた殿様、ある日、
「さんまを持ってまいれ」
を言って家来を困らせます。
そこで家来は早馬で、とり急ぎ千葉の房総半島までなるべく高級なものを取り寄せたまではよかったのですが、さんまには小骨があるし、庶民のものなのでお腹を壊されても困ると思ったのか、油を全部抜いて、小骨を毛抜きで全部とったうえに味を抜いて「つみれ」にして運んだが、殿様は大いに不満。
そりゃそうですな。殿様の気を使いすぎたために味はほとんどしないですし。
「それ、この魚はどこのものじゃ?」
「ははぁ、恐れ入ります。房州から取り寄せたものです」
「ああ、それはいかん。さんまは目黒に限る」
まあ、落語でもいろいろありましたが、とにかく、鯛が安く、鰯が高くなった今日この頃。
ともすると、
鰯の頭も信心から→鯛の頭も信心から。
腐っても鯛→腐っても鰯。
このように諺(ことわざ)まで変わってくるんでしょうかねぇ?
「おめでたい」の「たい」を「鯛」に当ててたんですが、やがてはこの言葉も使われなくなるんでしょうか?
それからニシンの子供、数の子も安くなりましたね。
そして、昔大量でいた魚がいなくなってしまったのも。
鮒、泥鰌(どじょう)もたくさんいた川魚なんですが、見かけなくなりました。
一昔前、沼にはコイやフナの泳ぐ波紋が(これを魚紋といいますが)ところどころで見かけたんですが。
この魚紋を見て、釣れそうかどうか最初の目安になったんですよね。
めだかにいたっては絶滅の危機にまで及んで・・・。x±x
したがって、「柳川鍋」、最近では、こちらもなかなかお高いと聞きますし。^±^
テーマ : 落語
ジャンル : お笑い