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お家寄席14・錦の袈裟

さて、今日は「錦の袈裟」でご機嫌をお伺いします。吉原があった頃のちょいと小粋な噺です。
吉原は、江戸時代から始まり、元人形町の遊郭を指します。葦(あし)の生い茂るような湿地帯を開拓したそうですな。

ちなみに浅草のほうは「新吉原」でして、こちらは妙暦(みょうれき)の大火で、吉原が炎上、喪失して以降作られたといわれまして、ちょうど日本橋界隈もにぎやかになり、追いやられたといっても過言ではありません。
で、昭和33年まで隆盛を保ってたのですが、「赤線廃止」の1958年に向島・鳩の町とともに消失しました。
話が長くなりました。
・・・ではこちらは、平成17年5月10日の作品です。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



5月10日 与太郎さん、「錦の袈裟(けさ)」でまた登場

えー、毎度ばかばかしいところで、ちょいと、♪トテントテチンツンシャン…
三味線の音が聴こえるところでの一席ってぇのはまことに心持がいいもんで…。

あっしは、実のところ、浅草・吉の原の赤線って知らないんです。
したがってこの噺はフィクションであり、登場人物、設定は一切架空でござんす。

Shall we Rakugo?…まあ一席、始めやしょうか?

えー、江戸っ子は昔っから、隣町とはどういうわけか張りあいます。祭りに喧嘩はあたぼうですが、隣が色町に行ったからって、見栄を張ってまで張り合うんすな。

 江戸っ子は 五月の鯉の 吹流し 口先ばかりで はらわたは無し

言いたいことをわーわー言って、後はすっきり。これっぽっちのわだかまりもない。もっとも、わだかまりとか、根にもつやつなんか野暮でして。かえってつまはじきされちまう。

「おう、聞いたかよ、八っつあん」
「聞いたともよ、熊。なんでも隣の町内の連中、緋縮緬(ひぢりめん)のそろいのふんどしってぇ出で立ちで吉原でかっぽれを踊ったんだって?」
「そうなんだよ、憎いことするねぇ。それでね、留さんに隣町に偵察に行ってもらったのよ。したら留さん、その続きを…」
「したらね、向こうのいうことがいちいち癪に障るんでぃ。うちの町内はこんな粋な遊び、出来ねえだろうって自慢しやがる。悔しいじゃねえか。だから言ってやったんだ、こっちだっててめぇらに負けねぇ趣向がある、ってな」
「留さんよぅ、偉い偉い。それで隣に負けねぇくれぇの趣向ってぇのは?」
「ついついな、うちは錦のふんどしで遊(あす)んでやらぁ、ってな…、大見得を切っちまった…」
「おいおい、錦のふんどし? こりゃあ簡単に手に入る代物じゃねぇぞ。留さん、どうすんだよ!」
「…勢いで言っちまって、…どうしよう」
「どうしよう…って、だけどこちとら江戸っ子でぃ! 隣町の自慢話を聞かされて、はいそうですかもねぇじゃねぇか。こうなったら家財道具を質を入れてでも、錦のふんどしで粋にかっぽれでも踊ってやろうじゃねぇか! なあ、熊」
「そうともよ。八っつあん。じゃ、これから早速、誂(あつら)えて来らぁ。思い立ったが吉日だ。早速明日、吉原に繰り出そうじゃねぇか。おい、与太、おめぇじゃ、無理だろうな」
「あた、あた、あたいもあちらえて来るからぁ~」
「与太郎、でもかみさんがなんていうかな。おめえのかみさんって、強いんだろ?」
「ああ、それがね、あたいのかみさん、ものすごく強いの。竜太さんとミドリさんみたいなの」
「う~ん・・・じゃ、与太、こう言って泣きついてみな。
『隣町が吉原で緋縮緬のふんどしでかっぽれを踊るってぇ小粋な遊びをしてるんで、これは町内の若い衆で決めたことなんだが、うちの町内も錦のふんどしを誂えて吉原に行くことになった。錦の袈裟を借りられないだろうって、一人だけつまはじきされた…』
おめえのかみさん、あれでいて、見栄っ張りではねっ返りものだから何とかするって。必ず行って来いって言うぜ」
「うん」

与太郎さん、家に帰るってぇと、早速かみさんにこのことを説明しやすが、要領得ねぇ。そのうえ、
「隣の町内がシジミのお面のふんどしで吉原で遊びに行ったんだ。町内でも今度吉原に遊びに行くことになったんだけど、あたいは二匹のふんどしが借りられないから…って熊さんが、泣きついてみなって言ってた」
などと、余計な情報も入れてしまいましてな。

このかみさん、お咲って名前なんですが、与太郎と違い、頭もまわりやす。

「お前さん、何だい? 要領を得ないねぇ。シジミのお面って、緋縮緬(ひじりめん)のことかい?」
「おう、お咲、よ~くわかったねぇ。ひょっとして、お、お咲も、そのシジミ面のふんどし、つけてるのかい? あたいにも見せておくれよ」
「馬鹿! つけてるわけないでしょ!」

張っ倒されやす。

「ということは、どうせ、うちの町内は錦のふんどしを誂えて踊るってことでしょう?」
「そうそう、その二匹だ」
「二匹じゃないよ。錦だよ。行って来なさいな。行くからには一番目立っておいで!…でも困ったわねぇ。錦の生地がないし…」

お咲、しばらく思案しておりやしたが、

「そうだ、じゃお寺から錦の袈裟を借りておいで。ただ借りられないよ。だからこう言いな。
『うちの親戚の娘に狐がつきまして、錦の袈裟をかけるとたちまちにして、このつきものが治まるって聞いたんで、ぜひご住職さんの錦の袈裟をお借りしたい、とあたしが言ってた』って…。
じゃ、今一度練習するから口うつしで覚えなさいな」

与太郎、嬉しそうに口をとんがらせて、
「昼間っから口うつし? デヘヘ…」
「馬鹿!」
また叩かれやして…。

一通り練習をしやして。

「与太、わかったかい?」
「あ、あたい、最初のところ、忘れたな」
「そのあとは?」
「う~ん、覚えてないぞ」
「最後は?」
「…さっぱりだぁ」
「…ダメダコリャ」

で、さらに特訓して、お寺に行きます。

住職さん、
「おや、よたろうさんかい? なんだい?」
「あ、あ、あのね、実はね、あたいの親戚で狐がいてね、娘がついちゃったの…」
「おいおい、よたろうさん、それをいうなら娘に狐がついたんだろう? あべこべだろう」
「そ、そうなの。そのあべこべ。でね、二匹のケラをかけると治まると聞いたので、貸してほしいってお咲さん、言ってたぞ。さあ、住職、貸せ」
「…よたろうさん、敬語の使い方も違うよ。まあ、お前さんのことだから腹も立たないが。わかった、ただ弱ったな、明日、法事があってな、明日の朝この袈裟は使わなければならないのじゃが…」
「大丈夫、大丈夫。あたい、明日には吉原から帰ってくるから…」
「…吉原?」
「あばば、なんでもない、なんでもない。じゃ、明日の朝、返すっから」

翌日になりやして、早速町内の連中が集まって、
「じゃ、みんな、行くぞ。…その前に本当に錦のふんどしが揃ってるか、見せてくれぃ」
その場でふんどし検査をしやす。

「じゃ、最後に与太郎、与太…ちゃんと錦のふんどしをつけて来ただろうな。おめえさんは普段からたまにふんどしをつけてない、そそっかしいところもあるからなぁ」

与太郎が裾を上げますってぇっと、立派な錦がド~ンと…。

「へぇ~、こりゃ恐れ入った。与太さんのがいちばんすごいじゃねえか。…ん? このワッカは?」

これは袈裟輪(けさわ)ですな、この袈裟をふんどし代わりに締めると、確かに貫禄はつきやすがな、どうしても大事なところにワッカが来ちまう…。

早速、吉原に繰り出しやす。

酒のやり取りのあと、じゃ、余興で全員揃ってかっぽれを踊るってぇんで、皆ふんどし一丁になりやして、見事な金ぴかの錦、錦、錦。
これには店のもの一同びっくり。

「へぇ、大したものだねぇ。粋だねぇ。きっと、お大名の集まりですよ。でもこの中に、お殿様がいますよ。…ほら、あの股間にワッカがあるおかた、ほかのかたはともかくも、あのおかただけは丁重に扱いなさい」
「え? あの抜けてるやつがですか? 踊りもぱっとしねえし、何でですか?」
「わからないの? お殿様って、一番ぼうっとしてるものなのよ。それにあのワッカをご覧なさい。あれはチン輪っていって、粗相をするときに、あの中にモノをとおして家来にさせてもらうものなのよ。お殿様は自分でしないものなのよ」

この一言で、与太郎さんだけもてにもてやして、一人だけ「お持ち帰り」ってぇやつですな。

翌朝、当然でございやすが、与太郎を除く皆の衆、不満たらたらでして・・・。

「ちっ、なんでぇ、この店、せっかく錦のふんどしで誂えたってぇのに、つれねぇじゃねえか」
「そうともよ、なんでぃなんでぃ。俺もな、夜、花魁(おいらん)がいつ忍び込んでくるか、今か今かって待ってたのによぅ、なかなか戸が開かねぇ。誰か開けねぇか、誰か開けねぇかって思ってるうち、…あけた」
「おぅ、誰か開けたのか? じゃ、良かったじゃねぇか!」
「夜が明けたのよ」

かと言やぁ、こっちでは、会計の前に出て来る豆菓子ばっかりつまむ輩(やから)。

「こちとら、こんなお茶と豆菓子、喰いに来たんじゃねえのによぅ。…おい、豆菓子おかわりだ!」

 吉の原 衾をあけて 愚痴の朝…

                粗忽亭長兵衛・作

「おう、そういえば、よたろうは?」
「あ、そうだ。どうせこんなもんでぃ。奴はもてなかったって、一人で泣いてるんじゃねえのか。おう、慰めてやろうぜ」

そぉーっと、ふすまを開けて見ますってぇっと、泣いてやす、与太郎でなくって…、花魁(おいらん)が随喜の涙…。

「おいおい、なんでだよ、よりによってこんな奴が? おい、与太郎、帰る時間だよ。早く起きあがんな」
「あのぅ、だめなの。花魁が足で挟みつけて、あたいを帰さないの」
「おぅ、随分見せ付けてくれるじゃねぇか。だったらまあ、もう少しそこでよろしくやってな、あばよ!」
「おい、みんな、待っておくれよ。あたいも帰るから」

起き上がろうとする与太郎に、
「お殿様、今朝は帰しませぬよ」

花魁が言いますってぇと、与太郎、慌てやして、
「それはいけない。袈裟返さないと、お寺をしくじります」

え~、あっしもやってるうちに、ひとつ心配になりやした…。
「錦の袈裟」を演じて、ばちが当たりませんように…。

色即是空、空即是色…。

m<●>m!
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