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お家寄席19・鰻のたいこ

さて、今日は鰻のたいこです。二流の幇間(ほうかん)、たいこもちが何とか鰻を五知になろうと仕組んだものの・・・さてどうなりますか。
・・・では早速どうぞ。平成17年5月15日の作品です。
一部、一八の台詞を最新のものに改めました。^±^ノ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


5月15日 幇間(たいこ)の一八がいよいよ登場

毎度、お運びでございまして、ありがたく御礼を申し上げます。本日もばかばかしいことを申し上げ、お暇を頂戴いたします。

えー、太鼓持ち、これは昔幇間(ほうかん)とも申しましてな。今では絶滅寸前でございますな。

でもこれがなかなか大変な職業でして、お客様が「白」って言やぁ「白」、「黒」って言やぁ「黒」なんですよ。

「今日はいい天気だねぇ」
「さいでがすねぇ。今日はいいお天気で…」
「でも、雨が降りそうだな」
「ええ、ええ、旦那様のおっしゃるとおりでございますねぇ。悪い塩梅(あんばい)に雨になりそうです」
「でも、向こうの雲から晴れ間が覗いてるぜ」
「さようでございますねぇ、いよっ、いい晴れ間だ、音羽や~」
ってぇんで、何の掛け声だかわかりませんで…。

でもこんなのはまだ一流のほうの太鼓持ちでござんして、野太鼓なんかは違いますな。「たかり」に近いものがありやして。

夏目漱石氏の「坊ちゃん」にも「野太鼓」がいましたが、これは現在でいう、キャッチ太鼓もちですな。

キャッチ、って申しやしても品川・浅草などの色町でやるんですな。あまり世田谷や中野なんかで太鼓もちをするのを見たことがありませんが。

「いえね、それ、練馬の台湾料理屋んとこで見かけたよ~」
「何だい、それ?」
「あれ、でえこ(大根)もちと間違えた…」

…バカな間違いもあったようで。
とにかく、下等な太鼓持ちてぇもんが、大概われわれの噺の餌食になりますんで。

野太鼓なんぞ、相手への気遣いなんてもんは、砂の粒ほども持ち合わせちゃいませんな。ちょいと髪の毛が薄くなった人に、
「いよっ、あなたが来ると部屋が明るくなりますな、その頭で…」
ちょいと天然パーマの粗忽亭にも、
「いよっ、あなた、髪を黄色に染めてみたらいいですよ、焼きそばみてぇで…」
余計なことを言っちまう…。
…これじゃ、持ち上げじゃなくって単なる嫌味ですからな。
人の気に障(さわ)ることばかり言いやす。だから、しまいには、
「こんなやつは呼ぶな!」
って言われて、どんどん世の中を狭くしちまうんですな。

ただ、どんなに最悪の野太鼓でも、着物や履物にだけは気を使いますな。
いい着物をつけ、いい帯を締め、いい下駄を履いてねぇっと、誰からも相手にされやせんからな。
逆に言うってぇっと、「見目が命」ってわけでございますんで。

こちらは野太鼓の一八(いっぱち)、誰かいい獲物はいないかって、今宵も浅草の町をうろうろ、うろついてます。

「景気悪いねぇ…。弱ったねぇ。あちきも最近いいもんを何も喰ってねぇや。一昔前までは良かったなぁ。あら一八さん、やれ一八さんと、行った先々でたらふくうまいもんを喰えたんだがなぁ。バブルがはじけちまってからいけねぇや。誰か金を持ってそうな人、通らねぇかなぁ。お、来た来た。大島紬(つむぎ)の着物に派手な帯、下駄…がちょいとひどいが、まぁ、よござんしょ」

早速、その男につかつかと近寄りやしてな、
「いよっ、旦那さん。聞きやしたよ。こないだ、綺麗な芸者さんと歩いてばかな酩酊だって、もっぱらの評判じゃありませんか。あちきの目はだまされませんよ。いよっ、色男、このこの~」
「おい、お前さんは誰だ?」
「何をおっしゃいます。まさかこの一八をお忘れになったんじゃないでしょうね」
「お…? おぅ。い、一八さん? あぁ、一八さんか…」
「旦那さん、水くさい。『一八』と呼びつけにして下さいな。今宵は徹底的にお付き合いしますよ。いよっ…。あちき、もう腹が減っちまって。何とかして下さいな」
「じゃ、こうしよう。一八さん…だっけな…。今日は面白い遊びをしようじゃないか。普段なら俺と一八さんとの関係は客と太鼓持ちだが、君と僕の関係にしようじゃないか。了解してくれれば一緒に鰻屋にでも行こうじゃないか」
「いよっ、粋だねぇ。大概の連中は、祝儀もろくにくれねぇくせに、『おい、一八。あれをやれ、これをやれ』って注文だけは五月蝿い(うるさい)んだ。それを君と僕。いいねぇ。万事引き受けた。で、どこの鰻屋に行きやしょう」
「じゃ、角を曲がったとこの鰻屋でどうだ? 俺が知ってる店だ」
「いよっ、いいねぇ、うなぎおいしかの山、どじょう釣りしかの川。立派な鰻屋。随分と古風で、年季が入ってる店でやんすね~。まあ、シロアリじゃあるまいし、店を喰うわけじゃないから別にいいんでがすがね」

直ちに店に入りやして、
「いらっしゃいまし~」
「こんちわ、おかみさん。あちき、太鼓持ちの一八です。今後ともお見知りおきを」
「ではお二階へどうぞ」

おかみに二階の部屋へ通されます。

「じゃ、この鰻…の特上をふたつずつ持って来て。それと特上の酒、これもふたつ。お燗(かん)をして。これを二人前ね」

しばらくするってぇっと、酒と鰻が運び込まれてきて、
「いよ、家来がお酌、家来がお酌…」
って、旦那にお酒を勧めやすと、
「おい、さっき言ったばかりじゃないか。君と僕の関係だよ。お互い、手酌でやろうよ、手酌で…」
「旦那さんは偉いねぇ。普通なら途中から様子が変わるってぇのに…」

手酌と決まると、遠慮なんぞどこ吹く風。ぐいぐいと酒を煽(あお)り、くちゃくちゃと鰻を喰い続ける一八。

「う~、うめぇねぇ~。この酒。この店はいい酒出してるねぇ。昨晩の焼酎、まるで急行の通過待ちだね~。どけどけ~、こちとら一等車でぃ、駅で止まってろ、なんて言ってやがる。それにこの鰻、肉厚だ。さすが、いい店のいい鰻だねぇ。いよっ、肝吸い。いい鰻にゃ、いい肝だ。チョ~気持ちエ~、金メダル獲った水泳選手も言ってるよ。いよっ、この味、うますぎてなんも言えねぇ・・・。それにいいおこうこ、いよっ、一流の鰻に一流のおこうこだねぇ」

一八、おこうこのキュウリにまでよいしょして、やがては「アラエッサッサー」と踊るしまつ。

そうこう盛り上がってるってぇっと、男は、突然立ち上がり部屋を出ようとしやす。

「旦那さん、立ち上がりまして、どちらへ?」
「はばかり、便所だよ」
「いよ、家来がお供」
「おい、今しがた言ったばかりだよ。俺がひとりで行くから、一八さんは部屋でゆっくり手酌してなさいよ」
「じゃ、家来が不精してここで飲んでますから。どうぞ安産でありますように…」

一八、手酌で酒をやりながら独り言。
「いや、本当に粋な旦那さんだねぇ。ほとんどのお客さんはいつの間に『おい、一八、芸をしろ』って様子が変わって来るよ。なのに、君と僕の友達関係を保ってる。なかなか出来ないよ。そうだ。今夜はとことんお付き合いしようかな。運が向いてきたな」

しばらく飲んでいたが、男は一向に戻って来ねぇ。
「…それにしても、旦那さん遅いな。そろそろ頃合かな。お迎えに行こうかな…。そうだよ。
『お、お迎え? 偉い! さすが太鼓持ちの心意気だ。いくら友達と言っても太鼓持ちの心得はあるな。贔屓(ひいき)にしてやるぞ!』
…なんて言ったりして」

ひとりで北叟笑む(ほくそえむ)一八でございやした。

やおら立ち上がり、一階にある便所へ降りて行きやすが、
「旦那さん、家来がお迎えに参りました」
と言っても、何の音沙汰がありませんで。
「入りますよ」
入っても誰もいない。

一八、気になりましてな。店のおかみに、
「あの…、うちの連れは?」
と尋ねますってぇっと、
「お連れさんなら先ほど帰られましたよ」

「ああ、悪いことしちゃったなぁ。旦那さん、鰻が嫌いだったんだ。きっと、上で飲んでる連れに渡すようにって祝儀を帳場に預けてるんだ。あ、おかみさん、四角いもの、預かってない? あちき宛に。違う、それは勘定書き。そうじゃなくって、四角い紙で、祝儀って書いてあるの…。え? 預かってない…。じゃ、寸志っていうのは? 何? 祝儀に関するものは預からない? そう、じゃ、せめて、ここの勘定は済んでるんでしょ?」

「いえ、まだ戴いてません」
「まだ? そんな馬鹿な。連れは何て言って店を出たんだよ」
「俺はお供で二階にいるのが旦那だから勘定はその旦那から戴くように、と…」
「おい、待ってくれよ。おかみさんだって、どっちがお連れさんかわかりそうなものじゃないか。払う、払うよ。払いゃいいんでしょう? あ~、どうもあの男、目つきが気に入らなかったよ。わかったよ。残りの鰻、喰ってから払うよ!」

一八、後はもう悪口三昧でございますな。

「ああ、まずい鰻だねぇ。ここの店のは。さっきは客の手前、うまいって言ったがまずいよ。本当に天然物かい? 
お前さんのところは和食どころの騒ぎじゃないよ。洋食の養殖だろ。どうせ、どっか知らない国から密漁したやつなんだ。店に泳がせてる水槽の鰻の目つきだってよくないや。さっきの男といい勝負だよ。
あと、おかみさんの出した肝吸い。本当に肝の吸い物かい? 嫌なにおいがしたぜ、貝の腐ったような。飲んで死にゃぁしないだろうねぇ。こっちの体が心配だよ。
それにワタだくさんのきゅうり…こんなの今時のコオロギだって喰いやしねぇよ。
それに、この酒。まずい酒だねぇ。口が曲がるし頭にも来るよ。悪酔いするよ。何てぇ酒だい? 『二日正宗』? 聞いたこともねぇし、さすが、二日酔いしそうな名前だ。甘口、辛口ってあるけどお前さんのところは苦口(にがくち)かい?
そうか、お前さんの店だろう、保健所が来る日に店を閉めちまうのは…」

ぶつぶつ言いながらも、全部平らげて、
「お勘定だよ! 幾らだい?」

「9円75銭いただきます」
「何? 高いよ、こんなまずい酒にまずい鰻で9円75銭は、ぼりすぎだ」
「でも、お連れさんがお土産(みや)に2人前を持って行きました」
「わかったよ、ほら10円、あの男、敵ながらアッパレだねぇ。今日は暑かったからって、帽子(シャッポ)を買うお金を持って来て良かったよ」

「おい、もう帰るよ、え? お釣り? そんなろくにタバコも買えねぇ釣りなんざもらったって…。いいよ。お前さんにあげるよ。店をけなした慰謝料だ、取っておきな。おい、下足(げそ)を出してくれよ」

すると小僧さんが、甲高い声で、
「出てます」

「おい、出てますって、こんな粗末な下駄じゃないよ。あちきのは桐の本柾(ほんまさ)のいい下駄だよ」

「あれはお供のかたが履いてまいりました」

太鼓もちの皆さん、くれぐれも、せめて履物だけにでもお気をつけ下さいまし。
「鰻の幇間(たいこ)」の一席で、鰻ならぬお時間を割(さ)いていただきやして、ありがとうございやした。

m<●>m!
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