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お家寄席72・富久

さて、今日は「富久」の一席です。
年末ジャンボ、これもひとつの年末の風物詩になってきつつありますね。
・・・ではこちらは、平成17年12月29日の作品です。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

12月29日 年末ジャンボの一席を・・・

皆様、今年の年末ジャンボ宝くじは、買われやしたでしょうか?
買われた方、当たるといいですな。

えぇ、まあ今日は「宝くじ」にちなんだ一席で、皆様にご機嫌をお伺いしたいと思っておりやす。

当たって悪いは河豚(ふぐ)・牡蠣(かき)・車・・・当たってビックリ宝くじ!

・・・なんて、勝手にコピーライトなんぞを作ってみやしたが、宝くじ協会さん、CMで使ってやってくださいやし・・・。

さてさて時代は江戸の天下泰平(てんかたいへい)、八百八町(はっぴゃくやちょう)は浅草でのお噺(はなし)でして。
ここに久さんってぇ男がおりやしてな。
本名は久蔵さん。これでも幇間(ほうかん)、つまりたいこもちのはしっくれなんですがな。太鼓は鳴るが、酒にだらしないのが災いしやして、しくじりにしくじりを重ね、いまじゃしがない浅草は阿部川町でわび住まい・・・でしてな。

ある年の十二月の晦日(つごもり)、つまり十二月三十日ですな。久さんのところに文さんってぇ友人が訪ねて来やしてな。

「久さん、おめぇさん、今年も泣かず飛ばずでついてなかったねぇ・・・。どうでぃ。来年を占うつもりでさ、富くじがあるんだが、1分(いちぶ)で買わないかね?」
「おい、1分かい?・・・1分ねぇ・・・。金持ちにゃわからんだろうがこちとらなけなしの1分なんでぃ・・・。何? 当たれば千両?・・・か、か、か、買う買う! 買うよぉ~。てやんでぃちくしょうめ。で、いつ千両になるんでぃ! 明日? 八幡神社で?」
「久さん、そんな・・・。当たるとは限らねぇよ」
「・・・何でぇ、当たるとは限らねぇのか・・・」
「でも、買わねぇと当たらねぇよ」

「買わねぇと当たらねぇ」・・・今も昔も売るほうの常套句(じょうとく)ですな。

ちなみにですが、1両の相場は、江戸の元文の頃の価値じゃ12万円ほどなんだそうですな。

実際これを米の価値で換算するってぇっと4万円だそうで。
たぶん米の価値は今よりあったと思いますんで、これはちょいとあてにならないかも知れねぇですな。
米は今よりもぜいたく品で、「白いおまんまが食いてぇ」なんて言葉が、当時の嘆きにもあるほどですからな。

また手間賃で換算をすると、なんと30~40万にもなるそうですが、これもまたあてになりませんですな。
その証拠に、もしこの相場が事実だとすると、そばの価値が1500円ってことになり、たかだか屋台のそばが、もしもそんなに高値だったら誰も食べないでしょうからな。

また、1分はってぇっと4分が1両ですからな。「くじ札」が3万円ってえことになりますな。
こりゃ、べらぼうに高い値段で、ちょっと手出しが出来ねぇ買いもんですな。

1両が12万で、2分が6万円、1分が3万円・・・。さらに2朱が1分の半分だから1万5000円ですな。したがって1朱は7500円。また4000文で1両ですから1文は30円ですな。

するってぇっと、「時そば」はせいぜい30円ごまかした程度で。
「早起きは3文の得」ってえ言葉は、90円程度で、早起きしたところで100円ショップじゃ何も買えませんな。おまけに、まだ店は開いてませんですし・・・。

ま、ちょいと横道にそれちまいやしたんで、話を元に戻しやしょう・・・。

「買わねぇと当たらねぇよ」
「か、か、か、買う買う買う~。で、番号は? 何? 松の百十番、そいつはいいねぇ!・・・千両を、松(待つ)身も癪(しゃく=百)の火事当番(十番)・・・そうさなぁ、今夜はこちとら、火の用心の見回りだからなぁ・・・この語呂合わせも何かの縁じゃねぇか」

ってぇんで、この富くじを半ば勢いで買っちまったんですが・・・。
しかし3万もするくじ札を、どさくさで買うなんざ、粋ですな。あっし粗忽亭にゃ、真似できやしません。
もちろん当たる保証なんてありませんですがな。
ただ、久さんにとっては死活問題の1分(いちぶ)で買ったんですからな。こんなもんでも、がらんどうの部屋の隅にある大神宮さまの中に納めやして、もう既に当たったことを見計らって、ひとり酒盛りで悦(えつ)に入っておりやす。
「取らぬ狸の皮算用」っていいますか、まったく気が早いったらありゃしやせんな。

富くじの1等は賞金千両、2等は五百両・・・。
久さん、もしもこの富くじに当たったらこんな鳴かず飛ばずの幇間(ほうかん)業なんぞやめて、堅気になって店でも開こうか、で、いいかみさんにめぐり合って幸せになって今後は忠実な人生を歩もうかなどと・・・早くも人生設計を立てておりやして、夢は千里を駆け巡り・・・。

・・・「ハックション!」
・・・と、でかい自分のくしゃみで目が覚めやしてな。

「・・・ああ、いつの間についつい転寝(うたたね)しちまったな・・・。それにしても寒いねぇ。さてと、夜になったし、小便でもして、ひとまわり火の用心の見回りをして、早いとこ寝ちまおう・・・」
なんてぶつぶつと独り言をいいながら、拍子木を持って外を出ますってぇっと、南の方角のはるか先がボーッと赤い・・・。

「おいおい・・・、火事かい? これから火の用心の見回りだってぇのに洒落(しゃれ)にならねぇよ・・・で? どっちだ? 日本橋方向? お、あそこは横山町に越後屋の旦那さんがいるじゃねぇか。助けに行かねぇと・・・。おいらも酒の失敗で今は出入り禁止になってるけど、よく来てくれたなんて、許してくれるかもしれんし・・・」

こうなりやすと、居ても立ってもいられねぇで、拍子木を首にかけたまま、韋駄天(いだてん)走りで横山町へ。

果たして、越後屋は上へ下への大騒ぎでしてな。
旦那からも、
「おう、久蔵か・・・。よく来てくれた。ありがとうよ。今後の出入りを許すぞ」
なんて、お許しが出たまではよかったんですがな。

いざ、部屋の片づけが終わり、
「ご苦労さん、ご苦労さん。酒でも飲んで行きなせぇ・・・」
なんて酒を出されるってぇっと、久さん、元の木阿弥(もくあみ)でしてな。
「てやんでぃ~!」
なんてまた暴れちまう。

で、暴れ疲れて居眠りをしてるうちに、今度は浅草・鳥越(とりごえ)のあたりが明るくなったんで、仲間があわてて久さんを起こし、
「・・・おい、久さん・・・。おいおい、今度は久さんの方向が燃えてるよ・・・久さん、富くじ、大丈夫かねぇ・・・」

その声を耳にするや否や、パッと飛び起きて、久蔵、大急ぎで帰ってみますってぇっと、なんと火元は久蔵の隣のばあさんの所でしてな。気の毒に。久蔵の家もすっかり燃えちまいやして、炭になった柱が数本、残ってるだけでして。

翌朝、日付は大晦日。暮れ行く年のどん詰まり。
富くじの燃えカスさえも見つからないまま、久蔵がとぼとぼと八幡神社を歩いてやすってぇっと、ドンドンドン、太鼓が鳴りやして。

今日が富くじの発表だったんですな。
でも、久さんはがっかりしてるからそれどころじゃない・・・。
「あ~あ・・・ついてねぇなぁ・・・。こんな、晦日に火事を出す運の持ち主なんだ・・・。どうせくじだって当たってねぇだろう・・・」
それでも多少は気になってか、一応当たりくじの番号だけは確かめてみようと決心をしやしたが、なにしろ札を持ってないんですからな。

さて、富くじ抽選の場では、大変な人でごった返しておりやしてな。
「お前さんよぅ、もし富くじに当たったらどうする?」
「あっしはど~んと上方見物に出かけて、1年も帰って来ねぇな」
「じゃ、外れたら?」
「かけうどん食って寝ちまう・・・」
こんな暢気(のんき)な連中もいたりして。

そうこうしてるうちにいよいよ発表の刻。
「富くじ~、3等は~、梅の五十番・・・。2等は~、竹の百十九番・・・」
「どうだったどうだった?」
「かけうどんのほうだった・・・」

いよいよ1等の発表でして、
「千両富は~、松の~、百十番~」

久蔵のくじが大当たり・・・なんですがな。

「松の百十番? ああ、家が燃えなかったら当たったのに・・・。待つ身も癪な火事当番・・・火事でボー、くじもパー・・・」

一応、くじを買った文さんのところに、
「あの、1等、当たったんだが・・・」
「え? 当たったの? じゃ、札をお出し」
「・・・ふ、札は、火事で燃えてボー・・・」
「久さん、札がなくっちゃ、ダメだよ」
「え? せめて半分の5百両でなんとかならんかい?」
「札がないとねぇ・・・」
「じゃ、100両・・・」
「気の毒だけどねぇ・・・」
「じゃ、50両・・・」
「・・・ダメ」
「せめて、10両・・・」
「無理・・・」
「3両、2両、1両・・・」
「そんなことを言われたって・・・札がないとダメなんだよ・・・。可哀想だが、久さん、あきらめなよ・・・」
「・・・てやんでぃ! もう・・・い、いらねぇや! ちくしょうめ!」

久蔵、文さんを突き飛ばし、生きた心地もしないままに、身投げしようか、どうしようかふらふらしてるってぇっと、今度は頭(かしら)にどんと当たりやして。

「・・・ああ、頭(かしら)ですか?」
「頭ですかだと? ・・・。おめぇはつくづく暢気(のんき)な野郎だな。てめぇん家(ち)が焼けたって顔も見せねぇ・・・。こっちは、布団(ふとん)と釜と大神宮さまだけは部屋から出してあるんだが、ちっとも取りに来ねぇじゃねぇか」
「へ? 頭(かしら)、いやお頭、今、なんて言いやした? 大神宮さまもご無事で? いや~、お頭さま~」

なんて、急に鯛のお頭(たいのおかしら)扱いになりやして。

で、頭の家に急いで行ってみますってぇっと、ありやしたありやした!
大神宮さまの中に当たり札。

「頭、実はこの富くじの札、千両の大当たりなんでさぁ・・・。とっておきの1分で買って、この大神宮さまに納めておいたんです・・・」

「ほぅ、千両大当たりかい? そいつはめでたいねぇ。いい暮れになったねぇ。で、久蔵さん、そのお金はどうするんでぃ?」

「へぃ、これも皆、大神宮さまのおかげです。これでご近所のお祓い(お払い)をいたしやす」

もちろん、頭(かしら)にはたんまりとお祓い(お払い)をしたのはいうまでもありませんでしてな。

除夜の鐘が鳴って、久さんもいい年が迎えられたってぇ噺(はなし)で。
めでたしめでたしですな。

「富久」の一席でした。

さて、年の瀬です。

皆様も年末ジャンボ、当たるといいですな。
それとも、かけうどん食って、寝ちまうほうでしょうか?
まあともかく、皆様もいい年の暮れになるってぇっといいですな。

m<●>m!
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