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お家寄席80・らくだ

さて、今日は「らくだ」の一席です。
この作品は文字数ぎりぎりの超大作になっております。
・・・ではこちらは、平成18年1月24日の作品です。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

1月24日 馬さんの一席

えー、あっしは面白い落語が好きでしてな。特にとぼけた落語が大好きなんです。
ですから、どこかに面白いことが転がってねぇかって、毎日うずうずして、きょろきょろ捜しまくってやしてな。
とにかく、今回も充分にお笑いになってくださいな。
で、ちょいと長編になっておりやすが、我慢して聞いてやってくださいやし。
今回も有名な落語でして、「らくだ」ってぇのを演じさせていただきやす。

らくだって動物は、馬と違って、乗り心地が悪いそうでございやすよ。
なぜなら、馬の場合は上下に揺れるんですが、らくだの場合は左右に揺れる・・・。
でもって、長いこと揺られるってぇっと、車酔いならぬ、らくだ酔いっなんてぇのもあるらしいんですな。
ですから、
♪月の砂漠を~はるばると~
なんて暢気(のんき)に歌なんか歌えないんですな。
ちなみにこの歌の碑が、千葉の御宿(おんじゅく)にありやすが、御宿よりもむしろ鳥取砂丘のほうが似合いそうな歌でして。
結局、何が言いたいかってぇっと、らくだらくだっていっても、ちっとも楽じゃないんですな・・・。

あの~・・・らくだ・・・。
あ、そうでした、落語をやるんでしたな。忘れておりやした。いやまあ、忘れちゃあ、いけませんがね。

ある町内に「らくだ」ってぇ、大層乱暴者の男がおりやしてな。
とにかく、こいつは町内の嫌われ者でございやす。まあ、どこでも嫌われ者はいるんでしょうが、奴は特にひどい嫌われようでして。らくだが通った後は、必ず盛り塩が置いてあるってぇくらい、縁起が悪い代名詞になっておりやす。

このらくだってぇのは、もちろんあだ名でして。本名を「馬さん」って言いやすんですがな。どうしてらくだかって申しますと、図体が途轍(とてつ)もなくでかくって、年中もそもそっとしてて、それでいて喧嘩っ早くって、年中つばを吹っかけるんで、らくだってぇんですな。

で、ある日の朝、このらくだが土間で冷たくなって、・・・つまり死んじまいやして。

そこにらくだの兄貴分ってぇのが訪ねて来やしてな。
ところが、らくだの身内なんてぇのもろくな奴がいねぇもんでして、らくだといい勝負、いや、その上を行っておりやす。
まさに「類は友を呼ぶ」ってぇ諺(ことわざ)どおりですな。

さてこのらくだ、頬には刀っ傷がある・・・、それも縦横十文字に・・・。そそっかしい奴はその頬でオセロをやって殺されたってぇのもおりやして。
ところが今回やってきた男、輪をかけておっかねえ顔でして。ワニとサメと悪役商会とを合わせたような目つきでしてな。誰もが震え上がる・・・。それで酒が好きで、年中赤ら顔をしてやして。おまけに酒乱ときたもんだ・・・。

「らくだ~! お~い! いるか?」
部屋を空けてみますってぇっと、らくだ、土間ん所で倒れてる・・・。

「らくだ! おい!・・・らく・・・やや、冷たくなってるよ。そういや、昨日、らくだに会った際、手に何か持ってたな。
『おい! らくだ! それなんだ?』
って聞いたらふぐだって言いやがった。
『おい、よせよ。そんなもん食ってると当たるぞ』
って忠告したんだけどよぅ、
『な~に、ふぐぅ? てやんでぃべらぼうめ! こっちからあててやらぁ。これから俺はこいつで料理しようってぇんだ! 縁起でもねぇこと言うなぃ!』
って息巻いてたけど、まあ、確かに手さばきは上手で、料理人になりゃあ大成したくれぇ何でもうまく裁いてたんだが・・・この野郎、ふぐの毒を食ってあたっちまったんだな。不遇(ふぐう)な奴よ。なんとかこいつの葬式を出してやりたいが、こいつ、町内で嫌われてるって聞くし、それにこちとら今、博打(ばくち)ですっからかんになっちまったしなぁ・・・」

そこへくず屋が通りやして。
「くずぅ~い、おはらい・・・くず~い・・・」

そこに野太い声が。
「おい! くず屋! こっちに来やがれ!」

くず屋も発声してから気がつきやして。慌てて口をふさいだが後の祭り。

「おっと・・・。いけねぇ・・・。ここ、らくださんのとこだよ。とんでもねぇとこで声を出しちまったなぁ。・・・こいつはやばいなぁ。やだなぁ。この間だってそうだよ。らくださんのとこ、上がったら、いきなり、
『おい。くず屋!この皿買って行け!』
って怒鳴るんだよ。見たらひびだらけ。で、こっちが、
『無理です。持つと割れちゃいます』
っていうってぇと、
『じゃ、この皿を買う奴を見つけて来い。で、そいつをこっちに連れて来て皿の前に座らせて無理矢理買わせろ!』
そんな無茶苦茶なことを言うんだからなあ・・・。
『いや、どうしてもダメです』
って言ったら怒ったねぇ・・・。いきなりこっちの襟首(えりくび)つかんでぎゅっと締め上げたねぇ。それも右と右、左と左だったらまだしも、右と左、左と右に互い違いに締め上げられた・・・、互い締め・・・あれは苦しかった・・・」

「おい! くず屋! 何をぶつぶつ言ってやがんでぃ! とっとと、こっち来やがれ!」

しょうがなく、
「見つかったらしょうがねぇ・・・。運がないと思ってあきらめよう・・・へぇ~い」
って玄関に入りますってぇっと、らくだが横たわってる・・・。
で、その前に見知らぬいかつい男が立ってやして・・・。

「あなた様は?」
「おぅ、俺か? 俺はな、こいつの兄貴分で寅っていうんでぃ!」
「そ、そうですか・・・。あれ? らくださん。よく寝てますねぇ」
「寝てるんじゃねぇよ。くたばっちまったんだ」
「え? らくださん、お亡くなりになられたんですか? どうして?」
「どうやら、ふぐにあたったらしいんでぃ」
「へぇ、らくださんがふぐに?・・・まぁ、ふぐもよくあてたもんですねぇ」
「この野郎、てめえ福引みたいなこと言うねぃ!」
「で、どうしたら・・・」
「おい、香典代わりと思ってだな、この皿を買ってけってぇんだ!」
「いえ、ダメなんです、その皿は・・・」
「じゃ、このやかんを買ってけ!」
「そのやかんもダメなんす。底が無いんす」
「じゃ、この花瓶・・・」
「だ、ダメなんす、それも・・・」
「この野郎! 何も持ってかない気だな! よぅし。わかった。じゃ、ここから出て行け! で、2歩でも3歩でも歩けるもんなら歩いてみやがれってぇんだ・・・高崎少林山(たかさきしょうりんざん)のだるまのように血で体中真っ赤にしてやる!」
「脅されたら困っちゃうなぁ~。わ、わかりましたよ・・・。らくださんには生きてる間はかなりいじめられましたが・・・、亡くなっちまったら仏様だ。・・・じゃ、両替用に細かい銭がここにありますんで、これを香典代わりの足しにしてやってください」
「そうか。人情味あるな。さすが下町だ。お前さん、いいくず屋になれるぞ!」
「大きなお世話です・・・そんなの」
「おい、くず屋。お前は人情味があるんだ。せっかくだから、ちょっと仕事をして行け。この町内の月番は誰だ?」
「そ、その・・・乾物屋だそうです」
「じゃ、その乾物屋に行って、
『らくだが死んだから町内から香典集めてこっちに持って来い!』
そう言って来い。で、ぐずぐずしたら、
『俺様が出向くぞ。この寅が町内をめちゃくちゃにするぞ!』
って言って来い!」
「そ、そんな無茶な・・・。これで勘弁してくださいよ。うちに帰ればこれで女房子(にょうぼこ)がいるんですよ。ばあさんも病気がちで早く帰りたいんですよ・・・」
「何? やらねぇのか? そんならなぁ・・・この家(うち)から2歩でも3歩でも・・・」
「・・・わ、わかりましたよ、高崎少林山ってぇんでしょう? それはさっきも聞きました。・・・引き受けましたが、今回限りですからね」
「おぅ。物分りがいいな・・・。じゃ、逃げるといけねぇからその商売道具の天秤棒と笊(ざる)とはかり、全部ここに置いてけ。それ! さっさと行って来やがれってぇんだ! 行け!」

しぶしぶ、くず屋、月番の乾物屋のとこに出向きやしてな。

「お、くず屋さん。どうした? 息せき切って」
「か、乾物屋さん。そ、それが、らくださんが・・・」
「何? らくだ? おい! 気をつけてものを言えよ。この町内、らくだって言葉はタブーなんでぃ! この町の標識を見てみやがれ。刀っ傷の顔が書いて斜めに赤い線が入ってるだろ? あれ、ゴーストバスターズのポスターじゃねぇんだぜ。『らくだ禁止』ってぇ標識なんでぃ。らくだ禁止は、略して『らっきん』って言ってな、らっきんの違反者には懲役3年、100万円以下の罰金に科せられるんでぃ。気をつけろよ。それにこの町じゃ、落語でも『しの字嫌い』のかわりに『らの字嫌い』って落語も語られてるくれぇなんでぃ・・・」
「いえ、・・・そ・・・そのらくださんが死んじゃったんで・・・」
「何? らくだが死んだ? そりゃ嬉しいねぇ。嘘じゃねぇだろうなぁ。で、どうして死んだんだ?」
「あの、ふぐにあたって・・・」
「何? ふぐにあたった? そうか。ふぐもよくあてたねぇ。そいつはめでてぇ。あてたふぐ様を神様に崇(あが)め奉(たてまつ)って、ふぐ祭りでもしてぇもんだな。太鼓たたいてドンドコドン、笛を鳴らしてピーヒャララって・・・。で、くず屋さん、ご苦労さん。それを報告に?」
「いえ、そうじゃないんです。らくださんのところへ行ったら、らくださんの上を行く奴が現れましてね。月番に町内の香典を集めて届けてくれって言ってるんです・・・」
「よしなよしな、そんな野郎と関わりあうのは・・・」
「へぇ、それがもう手遅れなんです。で、その寅さんってぇのがね、とっても怖い人でして・・・」
「何? 寅? それはまずいな。別の町内だが、噂はかねがねだ。・・・わ、わかった。そんならすぐに届けるから・・・」

で、くず屋さんが戻るってぇっと、今度は大家のところへ行って特級の酒と肴(さかな)の煮しめを用意しろと言い付けられ、また行かせられやす。
その間、香典は届きやしたが、ところが、この大家さん、とても頑固というか、余程らくだが嫌いなのか、頑として首を縦に振らねぇ。
「おめぇに飲ませる特級酒はねぇ!・・・こう言ってやんな」

とぼとぼとくず屋さんが帰るってぇっと、
「それならな、どうしてもって言うんなら、らくだの死体のやり場に困ってるから、大家んとこでカンカンノウを踊らすからって、こう言って来い!」

ところが、再び大家のところに出向いても梨のつぶてでして、
「へぇ? カンカンノウを踊らす? 踊らしてもらおうじゃないか! ばあさん。らくだのカンカンノウを踊らすってよ。そりゃ楽しみだな。長生きしてて良かったな。面白れぇ、踊らせてもらおうじゃねぇか。大体において、らくだの家賃がいくら貯まってると思ってるんだよ。こっちだって渋々ながらそれを棒引きにしてやるんだ。それが香典代わりだ、そう言ってやんな」
なんて取り付く島もありやせんでしてな。

で、くず屋。
「どうしてもダメなようです。店賃がたまってるから家賃の棒引きでチャラだって言って、どうしても受け付けないようですが、どうしやしょう・・・」
「カンカンノウのことは・・・!」
「・・・言いました、言いました。そしたら、
『踊らしてもらおうじゃねぇか』
って・・・。で、どうします?」

寅、すぐさま。
「あっち向け!」

で、何をするのかってぇっと、くず屋の背中にらくだを縄で縛り上げて、強制的に背負わせる。
「な、何する・・・、つ、冷たい・・・」

「おぅ! さっさと歩け! そんでもってな、大家んところへ案内しろ」

今度は寅も一緒に大家の家に上がり込みやして、
「おぅ! 大家んとこはここか! 約束どおりカンカンノウを踊らせに来たぜ!」

そして、その場で、

♪か~んかんのう
きゅうのです
きはきです
さんしょならえ
さあいほおい
みんかんさん
いっぴんだいざい
やははんろ
ちんぴがからくて
すいかんさん
とてつらしゃんしゃん
とてつらしゃんしゃん・・・


カンカンノウを踊りやしてな。くず屋も必死ですが。
何回も踊らせた挙句、らくだの死体を置いてゆくとまで言われ、さすがに大家も気味悪がって、慌てて、
「・・・わ、わかった・・・。私が悪かった・・・。じゃ、すぐに特級酒と煮しめを用意するからそれで勘弁して・・・許して・・・」
「用意できたら持って来い!」
「わわわ、わかりました。すぐ持って行きますから」

可哀想に、ばあさんなんかその場で座りションベンなんぞしちゃって・・・。

「わぁ、寅さん。大家さんもこれで持って来てくれますねぇ。良かったですねぇ。でもあなたもやることが乱暴ですねぇ・・・」
「じゃ、もう1軒、ついでに行って来い。これが最後だ。八百屋さんかららくだの棺桶代わりに菜漬け(なづけ)の4斗樽を借りて来い! で、あいたら返してやるからって言って、借りて来い!」
「どうですかねぇ。借りられますかねぇ・・・」
「いや、どうしてもっていうんなららくだの死体のやり場に困って、カンカンノウを踊らすって・・・」
「そうでしたそうでした・・・。カンカンノウカンカンノウ・・・それじゃ、行って来ま~す」

もうくず屋もやけくそですな。韋駄天(いだてん)走りで八百屋へ。

「おい、何だ? くず屋さん。今日はばかに走るまわってるな」
「そうなんです。無駄に走りまわってるんですよ。まったく利益にならない走りなんです」
「ところで、何か用かい?」
「ええ、実は、らくださんが死んだんです」
「おぅ、さっき、月番の乾物屋から死んだってことだけは聞いたんだけど、一体何で死んだんだ?」
「ええ、ふぐにあたって・・・」
「・・・へぇ~、そうかい。そいつはめでてぇなぁ。あてたふぐ様を神様に崇(あが)め奉(たてまつ)って、ふぐ祭りでもしてぇなぁ。太鼓たたいでドンドコドン・・・」
「・・・笛を鳴らしてピーヒャラララってぇんでしょ? 八百屋さん、そのネタはもう出てるんです。乾物屋さんのところですでに出ちゃってるんですよ」
「その報告に来たのか? まあ、くず屋さん、聞いてくれ。こんな愚痴を言って情けねぇけど、本当にらくだって嫌な野郎なんだぜ。この間、大根を買いに来たんだよ。で、あの野郎、何したと思う? 大根とネギとにんじんとジャガイモをわざと落として、
『お、こんなところに大根とネギとにんじんとジャガイモが落ちてる。大根だけ買うつもりだったけど手間が省けた。これを全部拾って行こう』
・・・って、持ってっちゃうんだぜ。何でもありなんだぜ。本当にあいつが死んで助かったよ・・・」
「・・・でも、安心するのはまだ早いんです。らくださんのところにひとまわり怖い寅さんって人がいましてね、
『八百屋さんのところへ行って菜漬けの樽を借りて来い』
って言うんですよ」
「菜漬けの樽、どうするんだい?」
「ええ、らくださんの死体を棺桶代わりに入れるそうで・・・」
「何を? いやだよ! 縁起悪い。これ以上らくだとかかわりたくねぇのに・・・」
「でも、あいたら返してやるからって・・・」
「なおさらいやだよ!」
「で、ダメなら手数が掛かっちゃうんです」
「何だその手数って?」
「らくださんの死体のやり場に困って、カンカンノウを踊らせるって言うんです」
「え? カンカンノウ? 踊らせてもらおうじゃないか・・・」
「ええ~?・・・またかなぁ・・・」
「・・・何だ? その・・・またかなぁって・・・。え? 大家さんのところで踊った?・・・い、いや、わかった、この樽、先着1名様にもれなく差し上げるから、ただで持ってって・・・返さなくていいから」

くず屋、樽を担いで、
「ただいま~。じゃ、これで。本当に商売道具、返してくださいよ」

ところが寅、まだ返そうとしねぇ。これが悪夢の始まりでして。
「いや、清めの酒だ。1杯飲んでけ!」
「いえね。家に帰れば、女房、子供とばあさんが・・・」
「おぅ、その話はさっき聞いた。いいから飲んでけ! 飲んで行かねぇってぇっと・・・」
などと脅すんで、
「じゃ、・・・1杯だけですよ・・・いただきます・・・献杯(けんぱい)」

ちびちびと飲みながら、
「ハァ~。いい酒だ! 大家さんがこの酒を渡したくない理由わかりますね。あっしなんかが飲む酒は焼酎ですよ。それも頭に響く悪い酒・・・。参勤交代だね、こりゃ。昨日の酒があばらの横で土下座してますよ」

で、
「ごちそうさま」
茶碗を置こうとすると、
「おい、おめぇ、いける口だな。味わって飲んでたな。いけるところで、もう1杯どうだ・・・」
「い、いえ、もうご勘弁を・・・」
「何? 俺の酒が飲めねぇのか? いいから飲め!」

くず屋、今度は、ぐいぐいと呷(あお)りやす。

「ハァ! じゃ、これでご勘弁・・・」
「おい、駆けつけ3杯って言葉もあるだろう!」
「・・・駆けつけ3杯?・・・そうですね、そういう言葉もありますね・・・」
なんか様子がおかしい・・・。
雲行きが怪しくなって来やして。

くず屋、徐々にペースが速くなりやして。
「ウ~イ、でも、寅さんって言ったっけ? おめぇさんは偉いよ! 偉い! でも、こう見えても、あっしだって人情は人一倍あるんだよ・・・ヒック・・・くず屋の中じゃ、いちばん人情が強いって言われてるん・・・おい! この野郎! 酒を注(つ)げよ! ぐずぐずしねぇで、注げってんだよ、この野郎!」
「おいおい、4杯目はいけねぇよ・・・。茶碗だってでかいんだぜ。それにお前さん、家に帰れば女房と子供とばあさんが待ってるんじゃねぇのか?」
「何を? この野郎! 無理矢理飲ませたのはそっちじゃねぇか! 家に帰れば女房と子供とばあさんがいるだと? 所帯じみたことを言うな、この野郎! いいからぐずぐずしねぇでとっとと注(つ)げってぇんだ! もっと徳利のけつを上げろ! てめぇのけつじゃねぇやこの野郎!・・・ヒック!・・・大体、こんな煮しめで酒の肴になるかってぇんだ、こんちきしょうめ・・・、おい・・・ヒック、今すぐ魚屋行って鯛をかっぱらって来い!」
「くず屋さん。かっぱらうなんて悪いことすんなよ」

「何、この野郎。てめぇ俺様に説教する気か? この野郎・・・ヒック! ぐずぐずしてねぇで、さっさと鯛を手に入れて来いってぇんだ! 手に入らなかったらなぁ、てめぇの背中にらくだを背負(しょ)わせてカンカンノウを踊らせてやるぞ・・・」

・・・って、ほとんどの落語家さんはここのサゲで終わるんですがな、粗忽亭はその後も話し続けやす、最後まで・・・。

「カンカンノウ?・・・カンカンノウだけはご勘弁を・・・」
カンカンノウ恐怖症になっちまいやして・・・。

「うるせぇ、こんちくしょう! てめぇ、さっきは、俺にさんざっぱらカンカンノウを踊らせたくせしやがって・・・。それにたんまりと香典をかき集めたじゃねぇか! この野郎・・・ヒック・・・ケチケチしやがって・・・このしみったれめ! ぐずぐずしねぇで、とっとと鯛を買いに行きやがれ!」
「・・・わ、わかったよぅ。じゃ、待ってな。鯛を買ってくるからよぅ・・・。まったく悪い酒だなぁ・・・」
「何を?・・・ヒック・・・何をこの野郎! 聞き捨てならねぇなぁ! 悪い酒だなぁだと?・・・ハァ(゚Д゚)? 悪い酒にしちまったのはてめぇのほうじゃねぇか、ぐずぐずしてるってぇっと、口から手ぇ突っ込んで、心臓を握りつぶすぞ! 早く買いに行きやがれ!」

仕方なく、月番から届けられたなけなしの香典で鯛を調達しやす。
これで逆転。酒を勧めたばかりに、完全にくず屋ペースになっちまいやしたな。
そんなこんなで、ドタンバタンと時間は過ぎやして、あたりはすっかり暗くなっちまいやした。

「おぅ、酒はもうねぇのかよ!・・・しょうがねぇなぁ・・・ヒック・・・寅公、そろそろらくだを樽に詰めちまいな」
「何をするんだよぅ、くず屋さん!」
「てやんでぃべらぼうめ! 決まってるじゃねぇか! 年ばかり重ねやがってそんなこともわからねぇのか!・・・ヒック・・・らくだを焼いてもらいに火屋(ひや)に行くんだよ! らくだの丸焼きでぃ!・・・ざまぁみろってぇんだ! ぐずぐずしてるってぇっとはりたおずぞ! こんちくしょう! 俺が前棒を担いでやっから、てめぇ、早く後棒を担ぎやがれ!」

火屋ってぇのは、火葬場のことですな。

ところが、二人ともべろんべろんに酔っ払ってやして、足元も覚束(おぼつか)ねぇ。
千鳥足で、ふらふらしてるってぇっと、田んぼのあぜ道で石っころに躓き(つまずき)、らくだを田んぼに落っことしちまいやしてな。

ちょうどそこに酔いつぶれて寝てた願人坊主(がんにんぼうず)がいやしてな。間違えてこの坊主を樽に詰めちまったから、さあ大変。

いよいよ火屋(ひや)に着きやして、早速樽ごと焼いてもらうことになりやして。
よっこらせと、この願人坊主を火に入れちまいやしてな。

慌てたのは坊主でして。
「あちちち! ここはどこだ!」
「火屋でございます」
「何? 火屋とな? 冷酒か・・・。まあ、冷でいいからもう一杯」

・・・冬は酒のおいしい季節ですが、くれぐれも飲みすぎには注意いたしやしょう。あっしも好きで自戒を込めて言ってるんですが。
お馴染み、「らくだ」全編、一巻の終わりでございやす。
なお、お酒をいただいたお客様・・・お足元にはご注意を。

おあとがよろしいようで。

m<●>m!
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