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お家寄席92・抜け雀

さて、今日は「抜け雀」の一席です。
ただで何日も宿泊した謎の人物とは?
・・・ではこちらは、平成18年6月6日の作品です。

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6月6日 抜け雀

えー。今日び、動物保護ってのが増えてまいりまして、それはそれでようござんすが、また、外来のものがやって来たために絶滅ってぇ危機に瀕(ひん)してる動物も多いようで・・・。

一昔前には、スズメも多かったですな。
最近、少なくなったと思いませんか?
スズメ百まで踊り忘れず・・・
諺(ことわざ)にありますが、とてもとても百なんて生きられませんですな。

スズメは鳥の中でも小さい動物なんで、ただでさえ大きな鳥に狙われやすいんですからな。

おまけに、物騒な世の中になってしまいやしたな・・・。人の弱みに付け込むってぇ言いますか。人間として最悪の事件が後を絶たないのは、嘆かわしいことですな。

ただ、昔から卑劣な事件が多かったようですな。
それは「籠」なんかに乗るにも、いい籠屋さんだったら、
「どこどこ行ってください」
って言うと、
「へぇ・・・」
って、目的地に連れてってくれるんですがな。
こんな籠屋ばかりでありませんで。
たとえば、女性などの一人旅で、
「どこどこへ行ってください」
って安心してるってぇっと、人気のねぇ、暗いところに連れて行き、悪いことをした挙句、宿場女郎に売っちまったってのもいたそうで・・・。人間の風上にも置けねぇ野郎が、昔からいたんですな。許せねぇですな。
したがって、「籠屋」を「かごかき」なんて言いやしてな。悪い代名詞でもあったようでした。
時代もちょうどこの頃の落語でして・・・。

今回は「スズメ」、「物騒」、この2点をキーポイントにしていただきたいんで・・・。

こちらは、神奈川の小田原宿・・・。
ここに「相模屋」ってぇ宿があるんですが、どうにもうだつがあがんねぇ・・・。というのも、ここのご主人、絵に描いたようなお人好しでしてな。

「うちはこの宿場で、一番いいお宿で・・・ありませんで、では、二番目かといいますと・・・そうでもありませんで・・・」
って、宿の宣伝もこんなに控えめでして。

「でも、親切を旨としてますので、安く泊まれる宿です・・・」

こんな調子ですから、どんどん利用されるのはいいんですが、人のいい奴ばかりとは限りやせんですな。大体が無銭飲食でとんずらされちまいやしてな。経営は大赤字でございやす。

「おまいさん。いい加減しにしておくれよ。今度お客さんに逃げられたら、おまいさんの目玉、くり抜くからね」
女房もいつも呆れておりやす。

さて、ここの家には衝立(ついたて)がひとつありやしてな。
この衝立も、危うく逃げられるところを、
「じゃ、何か造って、それを宿代代わりに・・・」
ってことで、造らせたやつでして。
ただ、この男、欲のないため、その衝立を造ったのが名人とはわかってませんでしてな。
宿の経営が危うくなったらいつ売ろうかな、売れねぇだろうな・・・なんてため息をつく程度です。せめて目利きがあればいいんですが、それさえもねぇ・・・。

そんな呆れた宿なんですが、その日も見るからにお金のなさそうな浪人風の男を呼びこんじまいやしてな。

しかもこの男、口だけは達者ですな。

「おい、ここの宿、前金として100両も預けておこうか」
などと、途轍(とてつ)もなくどでかいことを吹いたんで、ご主人、すっかりその気になって舞いあがっちまいやしてな。

「と・・・とんでもございません・・・お代はお立ちになる時で結構でございます」
「・・・そうか、欲のないやつだな。それはますます気に入った。じゃ、お前の宿に泊まるぞ」
「・・・あ、ありがとうございます」

ところがこの男、毎日、朝1升、昼1升、晩1升と、毎日3升の酒を呷(あお)って1週間も部屋でごろごろしてやす。

「あの男、おかしくないかい?」

最初に気づいたのは奥方のほうで。

「おかしいって、何がかい?」
「毎日、2階の部屋でごろごろしてるじゃないか」
「・・・べ・・・別にいいじゃねぇか。おかしくはねぇよ。土間にもぐって寝てたらモグラじゃねぇかって疑うけど・・・」
「いや、おかしいじゃないか。毎日3升の酒を呷って、外を見物するわけもなく、毎日ごろごろしてるんだよ。それが1週間だよ。あたしゃ、何かあるんじゃないかって・・・気になるんだけどねぇ。ひょっとして、おまいさんのお得意で、また無賃者を泊まらせたんじゃないかねぇ・・・」
「そ・・・そんな・・・簡単に人を疑うもんじゃねぇよ。すぐ人を疑うのはお前の悪い癖だよ。あの人は違うよ。あの人はね、
『内金に100両も払っとこうか』
って言ってたんだよ」
「でもねぇ・・・おまいさんはのべつ無賃者を泊まらせてるんだからねぇ。いまさら信用できたもんじゃないよ。じゃ、こう言ってごらん。
『お酒を用意したいんですがあいにく支払いが滞ってまして、酒屋につけが利きません。申し訳ありませんが、5両だけでもいただきたいんですが・・・』
って言ってごらんよ。100両のうちのたった5両なんだから」
「・・・そうかい? でも宿賃は後払いで結構ですって言った手前、それは出来ねぇよ」
「じゃ、あたしが・・・って言えばいいじゃないか。ぐずぐずしないで、とっとと行って来な」

尻をポンとたたかれて、奥さんにけしかけられ、しょうがなくこの男のところに行きますってぇっと・・・、この男。

「何? 5両・・・? ないよ・・・」

あまりにも堂々と答えたんで、ご主人、耳を疑いやしたな。

「え?」
「ないものは、ない!」
「え? 1文もないの?」
「ない!」
「え? からっけつ?」「からっけつだけは余計だ!」
「え~? ない?・・・ないって・・・。それはないよ・・・1週間も毎日酒をがぶがぶ・・・お金がないのによく堂々としてられるね。どうすんの? どうするんだよ」
「で、わしもどうしようかと困っておるんじゃ。100両あるってでかいことは言ったけど、実際はないし・・・。そうこうしてるうちに、1週間経ってしまった・・・どうしよう?」
「ど、どうしようじゃないよ! こっちが聞きたいよ。こっちゃ、またうちのものにがたがた言われるんだ。なんでお金がないのに1週間も泊まるんだよ。1日か2日なら何とかなるってのに・・・」
「そうだ! じゃ、宿賃の肩代わりに、何か書き残しておこう。じゃ、何か描くものを持って来なさい」
「描くものですか・・・。じゃ、この衝立(ついたて)でいいですか」
「ほう、いい衝立だ。なにゆえに、ここにこんないい衝立がある?」
「それはね、かれこれ1月も前ですかねぇ・・・。お前さんと同じ、お金を持ってないのが泊まってねぇ。お前さんと同じお金のないものがねぇ・・・これを造ったんだ」

こんな主人のささやかな嫌味にも聞く耳を持ちやせん。

「ほう、これはいい仕事をしておる。これならば描き残して行けるぞ。よかったな、ご主人!」
「全くこのお方は、嫌味も通じないんだからね。じゃ、この衝立、どうするんです?」
「じゃ、わしが描くからお前はこの墨で、墨を磨(す)りなさい」

懐から、形のいびつな、使い古しの墨を出しやして、ご主人に渡しやす。

「そんな・・・。自分で磨(す)ればいいじゃないか!」
「こっちは絵を描いてやるんだから、お前が磨(す)るんだ! ばか!」
「・・・どうせばかですよ。ばかだからお前さんを1週間も泊めたんだ・・・。おや、この墨、いい薫りがしますな」
「お? わかるか? お前は、鼻だけは一人前だな」
「へいへい、いまさら鼻だけ褒められても、いまさらお足も入ってこないし・・・別に嬉しくありませんよ・・・。はい磨りあがりましたよ・・・」

ご主人に衝立を持って来させて、あまつさえ、硯(すずり)に墨をすらせて、自分はしばらく堂々と腕を組んでやしてな。準備がすっかり整いやすってぇっと、

サササ・・・!

目にも留まらぬ速さで書き上げやした。

「こ、これ何?」
「見て分からんか? お前、鼻はいいが、目はダメだな。もう、そんな目なんかいらんから、くり抜いて、後は銀紙でも貼っておけ!」
「よくそんな無茶なことを言いますね。だから何なの? この絵は」
「わからんか? スズメが描いてある」
「スズメ?」

最初は目を疑ったご主人も、凝視してるうちにスズメに見えてきます。そのうちにスズメ以外何者でもない気がしやした。

「・・・ス、スズメだ・・・。あ、こっちから見て・・・あ、スズメだ!」

「じゃ、お前にはこのスズメを預けておくが、この絵は決して売るなよ」
「言われなくても、売れませんよ!」
「じゃ、わしは失礼する!」

さっさと出て行きまして・・・。
後からおかみさんの声が。

「ちょいと、お前さん」
「へ?」
「お前さん。今、泊まってた男が出て行ったね。お勘定はちゃんといただいたのかい?」
「・・・い・・・いや・・・。その・・・ただで・・・」
「どうしてお前さんはのべつまくなしでただでお客さんを泊まらせるの? お前さんの目はもう目の役目なんてしてないよ。そんな目なんかいらないから、さっさとくり抜いて、後は銀紙でも貼っておきな!」
「さっきもそれ、言われた」
「お前さんはいつもそうなんだから・・・もうお宿なんてやる気しないよ。明日から廃業だ。・・・今日はもう寝ちまうよ」

おかみさんは不機嫌になりやして。まあ、ご主人自らまいた種なんですが、これ以上どじを踏むとまずいってぇんで、翌朝、早くから起きやして、昨日まで男が泊まってた部屋の掃除をしてやすと、

チッチッチッチ・・・

スズメが部屋から飛び立ちやした。

「あれ、スズメ? 鳥なんか閉めこんだ覚えはないんだがな・・・」

と思ってやすと、そのスズメ、外で餌をついばんでぱっと衝立の中におさまりやしたからもーびっくり。

「おい、お前、起きろ! 昨日男にスズメを描かせたんだ。そしたらそのスズメ、衝立から飛び出して餌をあさり、で、元に戻ったぞ」

慌てて奥さんを起こしますが、

「起きて寝ぼけると承知しないよ!」

取り合ってくれませんで。

しょうがないから翌朝、ご近所を集めて現場検証をしやすと、チチチと飛び立ったから大騒ぎ・・・。
たちまち噂が噂を呼び、このスズメが一目みたいってぇんで、行列のできる宿になり、「スズメのお宿」っていう別名までいただきやした。

「今日はここで泊まれますか?」
「あいにく満室なんですが・・・」
「相部屋でも構いませんで・・・」
「いや。申し訳ありませんが、相部屋もありませんで・・・」
「トイレでもいいですよ」

ついには、玄関に泊まり込む、犬みたいなお客さんがいまして。

そのうちにこの絵が大久保加賀藩主の目に止まり、1000両で売ってくれといわれますが、そこは正直な主人で、売っちゃいけねぇって言われたんで、事情を説明しやすと、

「残念だ、ではこの絵を描いた男に逢えたら是非お譲りいただけないかと申しつけて欲しい」
てなことに・・・。

この絵が評判になって半年余り立ったころ、身なりの立派なご老人が、
「スズメの絵、ちょっと見せなさい」
って言うんで見せましてな。ところが、

「このスズメは飛んでる姿だな・・・。これは描いた者の手落ちだ。ぬかりがある・・・。このスズメ、衝立から出たり戻ったりする力を持ってるが、休むところがない。このままでは疲れて、しまいには落ちて死ぬぞ」

この言葉にご主人、困ってしまいましてな。思案の末、
「どうしたらいいんでしょう?」
悩んでいるってぇっと、
「では、鳥籠を描いてやろう。明日の朝早く、この墨で磨りなさい・・・」

よく早朝、ご主人が約束どおり墨を磨ってやす。すると、覚えのあるいい薫りが・・・。

「この墨、いい薫りがしますね」
「うむ、お前さん、いい鼻してるな」
「ええ、鼻の評判はいいんですが、あいにく目の評判は悪くて・・・」

墨が磨り上がると、スズメが朝、抜け出る隙(すき)を狙って、

サササ!

ご老人が鳥籠を描きやす。

「これでスズメは助かったぞ」
「ははぁ、ありがとうございます・・・」
「この絵を描いたものに伝えておけ。まだまだ修行が足りんとな・・・」
「あの、あなた様は?」
「この絵を見ただけで、名前を言わなくても分かる・・・」

これがまた評判になり、絵の額も1000両から2000両にはねあがりやす。
ここの夫婦、もうがたがた震えが止まらなくなっちまいやしてな。

さらに数ヶ月が経ち、無銭飲食の男が、立派になってひょっこり戻って来やす。

宿の主人、身なりの立派さに驚きやして。どうしたのか尋ねやすと、絵で大成したというんで、これから親元に帰るらしい・・・。

「実は大久保加賀の守(かみ)様がこの絵を1000両で売るって言われて・・・」
「それはよかったな。で、ご主人。売ったか」
「いや、あなたがお売りにならないようにと言われたので、売ってません」
「わっはっは・・・。正直な男だな。では、そのスズメの絵、お前にやるぞ」
「この絵を下さる? ありがとうございます。すると、もう1000両、値が上がるんで・・・」
「え? どうして値が上がる?」
「・・・数ヶ月前だっかかな。この絵にはぬかりがあるって、手直しがありまして・・・」
「何? ぬかりがある?」
「そうなんです。この絵には手落ちがある・・・っておっしゃるご老人がいらしたんです。そのお方が言うには、衝立から出たり戻ったりする力のあるスズメ・・・。このまま飛び続けると疲れて落ちて死ぬと・・・」
「・・・うむ・・・わしの手落ちだ・・・。そのお方が直してくれたのか。・・・して、その絵は誰が・・・」
「それが、絵を見れば分かる・・・とおっしゃっただけで、名前を明かさなかったんで・・・」
「・・・そ、そうか・・・ひょっとすると、と思っておるんだが・・・その絵はどこにある? 見せてくれまいか?」
「ええ、こちらでございます。どうぞどうぞ・・・」

ガラッと部屋の戸を開けて、例の衝立(ついたて)の絵を見せます。

するってぇっと、この男、絵を見たとたん、その絵に向って土下座をする始末・・・。

「・・・やはりそうでしたか・・・。長いお暇(いとま)、お許しください。そして親不孝の段、重ね重ねお許しを・・・」
「この絵の前で、土下座なんかをして・・・。いったいどうしちゃったんですか?」
「いや、この絵をお手直しくださったのは、実はわしの父だ・・・」
「まあ、お父上でいらっしゃったんですか。親子そろって、名人なんですね・・・」
「わしは、狩野派の絵師だったんだが、若気の至り、心得違いをして親に勘当をされてな。で、このスズメの絵がもとで、勘当を許され親元に帰るところだった・・・」
「そうなんですか。それはよぅござんした。あなた、名人な上に親孝行ですね」
「いや、わしは決して親孝行じゃなかった・・・」

「いやいや、何をおっしゃいます。あなたは親孝行でございますよ」

「いや、親不孝だ・・・。わしはこのとおり、親を駕籠かきにした・・・」

「抜け雀」ってぇ一席でございやした・・・。

m<●>m!
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